そして、富丘くんの頑な態度に、一瞬だけ気を緩めた瞬間

フェンス越しに両腕を取られ、彼の前まで引きずられるように寄せられた。


「解決はしないけど、いい提案がある」


身体を硬直させるほどの鋭い眼光で、富丘くんは私の動きを封じ込めた。

それはあまりにも真っ直ぐで、切実で、私の決意ですらとても太刀打ち出来ないほどだ。

ひんやりとした汗が背中を伝うなか、彼はさらに畳み掛ける。


「どうしても死にたいって言うなら⋯⋯僕の話し聞いてからでも遅くないんじゃない?」


なんでこの人は、こんなに私に構うんだろう。

そんな方法⋯⋯あるわけないのに。


あるわけないってわかってるのに⋯⋯


心のなかでそう自嘲しつつも、


「⋯⋯なら、教えてよ。富丘くん」


かすがりつくような声色で、私はいつのまにか彼の名前を呼んでいた。


私の心を、あっと動かすような提案があれば、教えて欲しい。


どうにか⋯⋯してよ。

なんとかして。


弱った心は、否応なしに彼にすがりつく事しかできなくて、いつの間にか私の気持ちは、シリアスな表情をする彼に飲み込まれていたのだった。