「――――」

「――死ぬつもりなの?」


キリッとした眉を寄せて、無言を貫く私に再び同じ事を聞く。


見たとおりだよ。


「⋯⋯そうだって言ったら⋯⋯なに?」


富丘くんみたいに、営業部のエースで、稀に見ぬ美貌を持っていて、無表情のくせに信頼が厚くて。

何もかもがうまくいって、全部持ってる人にはわからない。

自暴自棄になって冷たく返した途端。

フェンスからめいっぱい身を乗り出した彼は、瞬時に私の腕を捕らえた。


タッチの差で、避けられなかった。


「っ――!」

「そんなことしたって解決しない」


最悪だ。

こんなはずじゃないのに⋯⋯!


「やだっ、はなしてよ⋯⋯」


私の右手首を力強く拘束する逞しい手に、爪を立てて、反抗する。

傷ついて、痛がって、離せばいい。

こんなに惨めな姿、見られたくない。


なのに、富丘くんの顔色は一つも変わらなくて


「はなさない」


ギリギリと彼と私の皮膚の間に、指を押し込もうとしても。

痛いに違いないのに。

血管の浮き出た大きな手は、食らいつくかのように離してくれなかった。