「すごい田舎で、驚いたでしょう。」

帰りの車の中で、夏美は言う。
 

「ううん。案外、近いじゃない。高速道路も 新幹線もあるし。」

壮馬は、決して 田舎を 馬鹿にするようなことは言わない。
 

「家のまわり 何もないし。東京では 考えられないよね。」

夏美が言うと
 

「だからナッちゃん、伸び伸びして 素直なんだよ。」


とんぼ返りの 運転も、壮馬は 厭わずに 夏美に 笑顔を向けた。
 


「えー。そうかな。同じ時代に、同じ世界で、これだけ 環境が違うって 不公平だよね。」

夏美は 口を尖らせて言う。

壮馬は 明るく笑って 
 


「そんなことないでしょう。結局 俺とナッちゃんは 同じ所で 出会ったんだから。」

と答えた。
 

「それはそうだけど。」

夏美が 口ごもると、
 

「どこに生まれても 同じだよ。ナッちゃんみたいに ピュアな心で 努力する人には 幸せが 寄ってくるんだ。」

壮馬の言葉に、
 

「壮馬君みたいな?」


と夏美は 笑いながら聞く。
 

「もちろん。」


得意気に頷く壮馬。



夏美は そっと、壮馬の手を 握った。