翌週末に、壮馬は 夏美の実家へ行き 両親に 挨拶をした。


夏美の両親は 驚いたけれど とても喜んでくれた。


壮馬の 信頼できる人柄と 夏美への愛を 感じたから。
 


「何もできない娘です。でも 根性はあるので ビシビシ 鍛えてやって下さい。」

父は、壮馬に そう言って 頭を下げた。
 

「いいえ。僕の方こそ ナッちゃんに 色々 教えてもらっています。」

壮馬の 緊張した表情が、優しく ほころぶ。
 

「夏美が 言うことを きかないときは 連絡して下さい。この子、強情なんで。私が 言って聞かせますから。」

母も、真面目な顔で 壮馬に言う。
 

「ヤダ、お母さん。私、小学生じゃないのよ。」

と夏美は 笑ってしまう。


「夏美。廣澤さんに 恥をかかせないように 一生懸命、お仕えするんだよ。」

父の 古い言い回しに 夏美が 苦笑すると、
 

「僕も、まだ未熟で。お父さん、お母さんも ご心配かと思います。一日も早く 安心して頂けるように 二人で努力します。」


壮馬の 謙虚な言葉は 父と母を 驚かせ、そして 安心させていた。
 


「こんな田舎ですが 良かったら 時々は 足を運んで下さい。」

と両親に 見送られ 二人は 東京へ戻った。