「私、結婚を 許してもらえるだけで 幸せなのに。こんなに 私達のこと 考えて頂いて。うちの両親 驚いて 卒倒しちゃうかも。」


壮馬の 両親の温かさが 夏美を 徐々にリラックスさせていた。
 

「ただね、ナッちゃん。壮馬は 来年から 本社勤務になるよ。壮馬は 経営を 勉強しないといけないからね。もちろん 開発にも 係るけれど。だから ずっと一緒に 工場で仕事するって訳には いかないよ。」

父は、優しく 夏美を諭すように言う。
 

「はい。それは 承知しています。逆に 職場でも一緒だと 恥ずかしいから。私 仕事も 一人前に できないのに。」


壮馬は 少し不満そうに 父を見たけれど 夏美が先に答える。

母は笑って
 

「壮君より ナッちゃんの方が しっかりしているわ。」

と言った。
 

「だって俺 そんな話し 初めて聞いたから。」

壮馬が答えると、
 

「ナッちゃんとのことが なくても 壮馬は 来年、本社に 異動させる 予定だったからね。これからは 樹の片腕になって 営業や経営を 勉強しないとね。」

父は 真面目な顔で 壮馬に言い 壮馬も 素直に頷く。