夏美は そういう時間の使い方を 知らなかった。


学生時代は 勉強ばかりしていたし 就職してからは 会社とアパートの往復だった。

休日は 部屋で家事を片付ける。


たまに 学生時代の友人と 食事をすることが 夏美の外出だったから。
 


「壮馬君 こんなに毎日 出かけていていいの?」


夏美は 気後れして 壮馬に聞く。
 


「いいの。俺達の仕事は 頭が柔らかくないと いけないでしょう。綺麗な景色とか 芸術に触れることで 柔軟な発想ができるんだ。」


壮馬が 話す言葉を、夏美は 感心して聞いてしまう。

壮馬は 少し照れた顔で、
 

「これから ナッちゃんは 新しいアイディアが どんどん出てくるよ。先行投資だよ。」

と笑った。
 

「一種の職権乱用だね。」

と夏美も笑う。