その日から 一月近く過ぎた頃、新入社員は 各部署に 配属された。
 

「廣澤壮馬です。よろしくお願いします。」 

長身で アイドルのようなイケメン。


緊張感に満ちた 爽やかな笑顔。


課のみんなが 順番に 自己紹介をした後で、
 


「廣澤君は 副社長の息子さんです。でも、遠慮しないで 厳しく指導してあげて下さい。」


と課長は 笑顔で言った。


新入社員が 副社長の息子だなんて。

夏美は少し不安を抱いて俯く。
 


「相田さん。廣澤君に 色々、教えてあげて下さい。廣澤君も わからないことは 相田さんに 聞いてね。」


課長の言葉に 夏美は 驚いて 顔を上げる。

目が合った主任は『ほらね』という顔で 夏美に 微笑みかけた。
 

「はい。」


と夏美が言うと 壮馬は 夏美の方を向いて
 

「よろしくお願いします。」

と言った。