「向こうは 俺の気持ち 全然 気付いてないんだ。驚くよね。変に思われないかな。」

壮馬が言うと 父は 少し笑って、
 

「プレイボーイの壮馬が 弱気だな。失いたくないなら 本気で ぶつかるしかないだろう。」

と言った。


父の言葉が 引き金になって、壮馬は 夏美に 思いを告げた。


父の言葉で 壮馬は 一つのハードルを 越えたから。
 


壮馬は 自分の立場を考えると、安易に 恋愛ができなかった。

学生時代の 遊びならともかく、結婚を視野に入れての恋愛は 自分の意志だけでは 決められないと 思っていた。


自分は 廣澤工業を 引き継ぐ人間だから。

両親が それに相応しい人を 求めているかもしれないと 思っていた。