「あの、それ、恋人としてっていうことですか。」

夏美が やっと言うと、
 

「はい。俺 入社してから ずっと 相田さんの近くで 相田さんを 見てきました。俺、相田さんのことが 好きです。仕事以外でも もっと 一緒にいたいと思っています。」


壮馬の言葉を 夏美は 全く 予想していなかった。
 


「だって。廣澤さん 会社を継ぐ人でしょう。私なんか 付き合える訳 ないでしょう。」

夏美が やっと言うと 壮馬は 苦笑して
 

「そう言われると思った。でも俺 いい加減な 気持ちじゃないから。結婚を前提に 付き合いたいんです。」

壮馬が そう言った時、前菜が運ばれてくる。



少し会話が途切れた後で、
 

「そんなこと 無理です。うち、貧乏だし。結婚なんて できる訳ないです。」

夏美は 顔が強張って 怒ったような声で言う。
 

「そういうこと 抜きにして 相田さんは、俺のこと どう思っていますか。」


壮馬は 優しい笑顔で 夏美を見た。


夏美は 胸が ドキドキして うまい言葉が 見つからない。