定時で退社して、指定されたカフェの ドアを押す夏美。

壮馬は 奥のテーブルで スマホを見ていた。
 

「すみません。お待たせしてしまって。」

一年後輩の壮馬にも、夏美は いつも 敬語で話していた。


「あっ。こちらこそ、急にすみません。」

夏美は 壮馬の前に 腰を下ろす。


壮馬の前の アイスコーヒーは、まだ 半分以上 残っている。
 


「あの、相田さん。今日は プライベートな 話しなんです。僕 車で来ているので 少し付き合ってもらえますか。」

壮馬は 夏美の顔色を 窺がいながら言う。
 
「いいけど。どんな話しですか。」

夏美は 急に不安になる。


もしかしてリストラ。

女性の研究員は いらないとか。


夏美が ドリンクを 飲み終わるのを待って 壮馬は 立ち上がった。

そっと夏美を見て。



その優しい笑顔に、夏美は 初めて ドキッとした。