「ねえ、壮馬君。いつから 私のこと 意識していたの。」


2年以上 一緒に 仕事をしていて 夏美は 壮馬の気持ちに 全く 気が付かなかったから。
 

「うーん。すぐに 良い子だなって 思ったけど。決定的だったのは お祖母様が 亡くなった時かな。」
 


壮馬が 入社した年の秋 壮馬の祖母は 亡くなった。


忌引きが明けて 出社した壮馬。



一生懸命 平静を 装っていたけれど ひどく 憔悴していて 夏美は 思わず声をかけた。
 

「大変でしたね。」

と夏美が言うと
 

「はい。覚悟は していたけど。やっぱり 寂しいですね。」

と壮馬は 悲しそうな笑顔で 夏美に言った。


夏美は 静かに頷いて、
 

「でも、大丈夫です。姿は 見えなくても お祖母ちゃんは ずっと 廣澤さんの 中にいるから。」

と答えた。


壮馬は 少し驚いた顔で 夏美を見て、小さく頷いた。
 


「あの時 ナッちゃん お祖母様は ずっと俺の中にいるって 言ってくれたでしょう。あれと同じこと お祖父様が 亡くなった時 お祖母様が 言ったんだ。」


壮馬は 少し照れた目で 夏美を 見て言う。
 

「そうなの。」


夏美が 驚いて言うと 壮馬は頷いて 
 


「うん。すごく 驚いたよ。俺 一生 ナッちゃんと 一緒にいたいって あの時 本気で 思ったんだ。」

と優しく言った。
 


「私も お祖母ちゃんが 亡くなった時 母に 言われたの。私 お祖母ちゃん子で ずっと泣いていたから。私 母に言われて 少し 元気が出たの。」


夏美は 素直に言う。
 

「生まれた場所や 環境は違っても 俺達 同じ信念で 育ったんだね。だから 一緒にいて 違和感がないんだよ。」


壮馬の言葉が 嬉しくて 夏美は 壮馬の胸に 顔を埋める。
 


「壮馬君、ありがとう。」


優しく 夏美の背を 撫でる壮馬に 夏美は そっと言う。


「ううん。俺の方こそ、ありがとう。」


と夏美を 抱き締めて 壮馬は言った。