夏美の実家は 東北地方で、決して 裕福ではない。


父は 工場勤務の傍ら 少ない田んぼで 米作りをしている。

母は 病院の売店で パートをしている。
 


成績の良かった夏美は 東京の 名門私立大学に合格した。


両親は 夏美を 東京で生活させる為に 随分 無理をしたと思う。

夏美も 奨学金の 支給を受け 両親を助けた。


両親は 夏美の合格を とても 喜んでくれたから。
 


工学部の学生は 大学院に 進む者が多い。

学部生程度の 知識では 大手企業では 通用しない。


でも夏美は 大学院に進みたいと 両親に 言えなかった。


3才違いの弟も 大学生に なっていたから。


これ以上 両親に 負担は 掛けられないと思っていた。
 

夏美の弟は 自宅から通学できる 大学を選んだ。

成績は 夏美ほど 良くなかったけれど。

2人を 家から出すことは 両親の負担が 大き過ぎる。


弟は 夏美の犠牲になったと いつも思っていた。