side 涼太







「りょーた、おいで」





桐葉学園の中等部へ進級して
初めて部活動見学へ行った日

体育館の壁際に横一列で並んだ一年生


その最後尾に立っていた俺に
とびっきりの笑顔の先輩が手招きした


“りょーた”って俺だよな?
チラッと列を見たけれど
誰も動く気配がなくて


「・・・はいっ」


その先輩の所へダッシュした

ついこの間までランドセルを背負っていた俺を

頭ひとつ分大きな先輩は


「キャーーーー可愛い」


そう言うや否や
俺のトレードマークの天パ髪をクシャクシャにした



「・・・っ」


放心状態の俺と満足げな先輩


呆然としながら見上げた顔は

めちゃくちゃ可愛くて


心臓がドクンドクン煩かった


「あたしね三年の雨宮眞子
よろしくね?」


少し傾けた首とフワリと香る良い匂い



「はい」


負けないくらい笑顔を返した





* * *




センセーショナルな出会いは
眞子先輩の可愛いモノ好きが起こしたミラクルだった


あの日、あの一瞬で眞子先輩に恋した俺

眞子先輩と会うたびに
その気持ちは大きく膨らんで

いつしか

独占欲が芽生えた


絶対、眞子先輩を彼女にする!


それだけを思い続けた三年後
眞子先輩の好きな可愛いワンコで近付いた


あっという間に距離を縮めて



戸惑う眞子先輩を翻弄する



冷静になる時間なんて与える間も無く



どんどん攻め込んで



念願の“彼女”にした







* * *







ねぇ、眞子は気付いたかな?


俺がもう“可愛いワンコ”じゃないこと




気付いたとしても



もう、逃れられないこと・・・





「涼太」



「ん?」



「好き」



「っ」





いや・・・
逃さないの間違い








side out