「これから体育祭の種目決めるぞ」


三年生に進級して一ヶ月ほど経ったGW明け
今月末にある体育祭の話で
LHRは盛り上がっていた


「先ずは実行委員な、男女一名ずつ」


担任の福井先生が黒板にチョークを走らせる


「誰でもいいぞ?立候補する奴」


自らの手を挙げて教室内を見回す先生

その視線から逃れるようにみんな俯く


そりゃ、誰でもそうなるよね


「お?いつもの元気はどうした〜」


体育の先生らしく日に焼けた顔に白い歯
何故かジャージパンツにインされたTシャツ

福井先生の眉がハの字になったところで意を決して手を挙げた


「お?雨宮、立候補か?」


「はい」


「「「えー、マジ?」」」

「「「じゃ、先生俺も!」」」
「いや、俺だろっ」
「俺が先だろ」


「なんだお前ら、雨宮ありがとな
男子はジャンケンでもしろ」


教室内が騒ぎ始めたことで
前の席の知夏が半身振り返った


「平気?」


そう聞く知夏の表情は少し曇っていて
そんな顔をさせてしまったことに申し訳なさを感じる


「平気だよ〜、だって競技に出ないんだもん
委員くらいしなきゃね〜」


できるだけ明るく答えると
知夏は諦めたように笑った




* * *




三年前


中学三年生で最後の総体へ向けて
女子バスケット部の副キャプテンとして

いつにも増して練習に取り組んでいた


その日もいつも通り
大きな体育館の外周をランニングすることから始めた私は

走り始めの一歩目で「ブチッ」と身体の中から聞こえた嫌な音に動けなくなった