「そんな汚いものみたいな扱いしなくてもいいじゃん!」
「いや、なんというか…」
ーードタドタドタッ
伊江宗の声は廊下を駆け回る足音にかき消されてしまった。
「ねえ、てか今日、やけに騒がしくない?」
私がそう尋ねると、
「ああ、それはお清が来るからだろう」
と佐江宗が答えた。
「お清?」
「うむ。儂らの幼馴染じゃ」
「幼馴染……」
幼馴染といえば、思い出すのは日本史の先生に聞いたあの話だ。
どんな人かは知らないのに、ほんの少し気持ちが下がる。
「「はぁ……」」
「えっ?」
私の吐いたため息と、伊江宗のため息がユニゾンしたことに驚いて、私は伊江宗の顔を見た。
伊江宗はすごく嫌そうな表情を浮かべていた。
「伊江宗、なんでそんなに嫌そうなの?」
お姫様が現れてから速攻で私からそっちに乗り換えたくせに、お姫様のこと好きじゃなかったの?と不思議に思う。