元の世界に戻りたくなくて、ずっと起きていたくて、もう元の世界に戻れなくなってもいいのにって毎日思っている。

実際、寝ずに起きようとしたことも何度かあったけれど、決まって午前2時頃には眠りに就いてしまった。
オールしたことだって何度もあったはずなのに、何故か起き続けることはできなかった。

きっと、そういうルールでもあるのだろう。


「ねえねえ、伊江宗。これできる?」

「なんだ?」

「紙をこうやって折ったら…ほら、鶴!」

「それは、まことに鶴か?足が…」

「やっぱこの世界ではまだ鶴に足をつけてないのか」

「七瀬、七瀬の世界では足がついておるのか?」

「違うよ、佐江宗。基本はついてないけど、こういう折り方もあるの!」

「しかし…奇妙な鶴じゃな」

「可愛いでしょ?小さい頃教えてもらってから、ずっとこの折り方してるんだ」


伊江宗は、私の作った鶴をまるで汚いものを持つようにつまみ持ちして、怪訝な顔をして見つめていた。