私は、伊江宗さんに、夜に寝ると未来に戻り、また寝るとこっちの世界に戻ってくることを伝えた。
「なるほど…また奇妙な仕組みだな」
「はい…私もそう思います」
本当に、嘘みたいな世界だ。
「では、もしかしたら、この先一生、お主は未来の世とこの世を行き来するかもしれぬのだな」
「多分…私もよく分かってないんだけど」
「そうか…それでは、長い付き合いになりそうじゃな」
「長い付き合い…?」
「お主はこの世にいる間は、ずっとこの屋敷におるだろう?」
「いて、いいの……?」
「当たり前じゃ。七瀬は、儂らの許嫁だからな」
腕を組んで、飄々とした表情でそう言った伊江宗さんに、胸がトクッと跳ねた。
そんな気持ちを隠すように、私は月に視線を移した。
きっと、横顔が赤いのは、こんな明るい月光でバレちゃっているのだろう。
初めて、自分の居場所を見つけた気がして嬉しくなって、ちょっとだけ笑みがこぼれた。