「ったく…」

私は口を尖らせて伊江宗さんから視線を外し、庭の木を何の気なしに見つめる。


「…なあ、七瀬」

「なんですか」

「お主、何か隠しておらぬか?」

「…え?」

伊江宗さんは私の顔をじっと見つめ、その目は鋭い。
ドキッと心が跳ねた。


心当たりがないわけではなかった。
確かに私は大事なことを隠している。

だけど、どうしてそれが分かったのだろう?


伊江宗さんは妙に勘が良いなと感心した。



「どうして?」

「この二週間ほど、お主といて、常にどこか嘘くささを感じていてな。未来に帰りたいと言う割には、帰り方を本当に探しているようには見えないし、何を聞いても曖昧にするではないか」

「つまり、私が未来から来たってことを疑っていると?」

「いや、そうではない。ただ、本当は帰る方法を知っているのではないか?しかし、帰りたくないから言わないのではないのか?」