伊江宗さんと過ごすのも、一旦最後となった今日。


まだライバルは現れず、私達は変わらない日々を送っていた。


そんな今日は、満月だ。




「では、もう寝るか」

「はい」


お互い床に就き、部屋の明かりが消えた。

真っ暗な中、段々と眠りに落ちそうになっていると、ふいに隣から何やら動く音がして、私は目を瞑ったままその音に耳をすませた。


反射的に、伊江宗さんだと分かったし、布団から出て行った理由もすぐに察した。

目を瞑ったままにしたのは、私が起きていると気づかれたら、伊江宗さんに気を遣わせてしまうと思ったからだ。


伊江宗さんは、私が起きていることに気づかず、音を立てないようにそっと部屋から出て行った。



初めてこっちの世界に来た日、満月を二人で見ながら話していた日、彼が満月の日は眠れないと話していたのを覚えていた。

だから、そっとしておいてあげようと思った。