目に映るもの、手に触れるもの、全てが怖いくらいリアルなあの夢の世界の中でも、伊江宗さんの優しい微笑みは、脳裏に鮮明に残っていた。
「……では、教科書153ページを開いて」
日本史の授業は、あの夢の後でもつまらない。
でも、眠くなることはなくなった。
二人が生きている戦国時代を知ろうと思うと、自然と授業を聞いてしまう。
「…そういえば、この前話した双子の武将のことだが、新しい発見があったようなんだ。その話もしたいんだけど……」
先生のその言葉にぴくっと耳が反応する。
先生は教科書をパラパラ捲りながら、うーんと首を捻らせていた。
「ただ、試験が近づいていて授業ペースを上げなきゃいけないからなあ…。うん、これはまた今度の話にしよう。では、授業の続きだが…」
思わず、どこかの喜劇のように、立て肘で手のひらに乗せていた顔をカクンッと落としそうになった。


