私は伊江宗さんの方へ寝返りを打って、微笑んだ。
「何もありませんでしたよ。今と変わらない感じです。私は伊江宗さんといるのも楽しいです。だから、気にしなくていいですよ」
そう言うと、伊江宗さんも顔をこちらに向けて、安心したかのようにふわっと柔らかい笑みを浮かべて、「そうか」とたった一言だけ言うと、すぐに向き直して目を瞑った。
「……。」
笑顔がレアすぎるからだろうか。
どうしても、その微笑みが胸につっかえて残った。
胸を中心に、体中の温度が上がっていくのが分かる。
どうして、そんな嬉しそうに笑ったのだろう。
どうして、あんな笑顔を見せてくれたのだろう。
どうして、
私は、伊江宗さんの笑顔にときめくのだろう。
朝、目を覚ました後も、伊江宗さんの笑顔を思い出して顔が熱くなった。
月の光が差し込んで、ぼんやり照らされたあの笑顔が、どうも忘れられない。


