「まあ、一応夫婦ってことになっていますしね」
「佐江宗の時も、こうだったのか?」
「はい、毎晩こんな感じでした」
「布団はそのままか?」
「まさか!佐江宗さんも離していましたよ」
布団に足を入れながらそう言うと、伊江宗さんは「そうか…」と呟いて、自分の布団に入った。
「……のう、七瀬」
「なんですか?」
部屋の唯一の明かりだったロウソクの火を消し、お互いが眠りにつく態勢に入った時、不意に伊江宗さんが声を掛けてきた。
「佐江宗とは…どこまで進んだのだ?」
「どこまで、とは?」
「二週間も一緒におったのだろう?何かあったのではないのか?もし佐江宗といたいなら、儂は構わぬぞ」
「……それって」
ー嫉妬ですか?
心の中でそう問うた後、ありえないなと思って、その考えを打ち消した。
きっと、私が佐江宗さんのことを好きなら、と気を遣っているだけだろう。


