きっと、「じゃあこんな所に来る意味がないではないか」と怒って帰っちゃうんだろうな。
本当のことを言いたくなくて、私は曖昧な返事をしたまま無言でお餅を食べ進める。
「その様子だと、まだ何も見つかっとらんようだな」
「まあ……うん」
歯切れの悪い返事をした私をチラッと見ると、伊江宗さんはお茶をぐびっと一口飲んだ。
「…ごちそうさまでした!」
お餅とお茶を平らげ、私は満面の笑みで手を合わせた。
「さて、では参ろうか」
「次はどこ行きます??」
「そうだな…少し町を見て回ろうか」
「はい!」
私達は立ち上がると、茶屋を出て、城下町を夕方まで楽しんだ。
そして夜になり、私は伊江宗さんの部屋にやってきた。
相変わらずぴったりと並べられた布団に苦笑すると、私の隣に立って腕を組んでいた伊江宗さんが勢いよく布団を離れさせた。
「…女中共は何を考えておるのじゃ」
どすんっと布団にお尻を付けた伊江宗さんは、不機嫌そうにそう言った。


