「伊江宗、おるか?」
伊江宗さんの部屋の前まで来た私達は障子越しにそう声をかける。
すると、
「なんだ?」
障子がシャッと開いて、伊江宗さんが顔を出した。
「七瀬が、これをと」
佐江宗さんがそう言って私の方を見た。
私は佐江宗さんより半歩後ろにいたのだけど、前に出てきて羽織を伊江宗さんに見せた。
「こ、これ!ありがとうございました」
「ああ、羽織か。構わん」
伊江宗さんはそれを受け取ると、「では」と言って、すぐに部屋に引っ込んでしまった。
昨夜仲良くなれたところで、この不愛想さは変わらないようだ。
「では、参ろうか」
「はい」
私の方を向いて優しく微笑んだ佐江宗さんに、私も微笑み返す。
私も、伊江宗さんの冷たい態度にすっかり慣れてしまって、若干愛想のなさに驚いたものの、それ以上気にすることはなく、二人で城下へと向かった。


