佐江宗さんは本当に優しいな。
私は羽織をぎゅっと握って、頬を緩めた。
これは夢だと分かった今、未来への帰り道を探す必要なんてないけれど、どうせならこの夢を楽しもう。
夢にしてはあまりにリアルすぎる感触や景色を私はまじまじと感じながら、私は佐江宗さんと出かけるための準備をした。
「佐江宗さん!おまたせしました」
準備が終わった私は、来るようにと伝言されていた部屋まで来て、襖を開けた。
「おお、では参ろうか」
今まで読んでいたのか、本を片手に持った佐江宗さんがこちらを向くと、すぐに本を置いて立ち上がった。
「あ、ちょっと待ってください」
私は佐江宗さんを呼び止めると、羽織を彼に見せて、
「これ、先に返したくて」
と言った。
「ああ…それでは先に、伊江宗の元へ参ろうか」
佐江宗さんはそう言ってにこりと笑った。


