それがどうにも不思議だった。
だって、仮にも嫁取り合戦をしているライバルと自分の将来の嫁が、夜中に二人で話していたのに、平然とした顔をしているから。
「あっ、あの!」
そんなことを考えていたからか、部屋から出て行こうとする佐江宗さんを、私は無意識の内に引き留めていた。
「なんだ?」
佐江宗さんが振り向いた。
私は無意識で引き留めていたから何を言えばいいのか分からなくて、必死に言葉を探す。
「あ、えっと……その…いいんですか?」
「良い、とは?」
「私と伊江宗さんが話していたこと…嫌じゃないんですか?」
「嫌…といえば確かにそうじゃが、それは二人の勝手であろう?儂が口を挟むことでもない。それに…」
「それに?」
「伊江宗と喧嘩しているからという理由で、儂を選ばれる方が嫌であるからな。仲直りしてくれてからが始まりじゃ」
佐江宗さんはそう言って楽しそうに微笑むと、今度こそ部屋から出て行った。


