随分、精巧に作られた夢だったな。

あまりにリアルすぎるストーリーと、妙に残っている体温や感触に、私はまだどこか夢見心地だ。
でも、よく考えたら、タイムスリップとか結婚とか、夢でしか起こりえない。


少しずつあれが夢だったことを実感してきたところで、私はカーテンを閉めた。


「…雨、やだなあ」

ゆっくりとベッドから降りると、私はいつも通りあくびをしながら学校へ行く準備を始めた。



夢の中ではあんなに帰りたかったのに、起きてみると、ずっと夢の中だったらいいのに、なんて思ってしまった。



一階のリビングに降りると、「おはよう、七瀬」と微笑む母と、何も言わずチラッとこちらへ視線を移す父がいた。


「…おはよう」

低い声でそう返すと、私はキッチンへ水を飲みに行く。


私の家は、リビングやダイニング、キッチンが一つの部屋になっている。
父はリビングのソファで新聞を読んでいて、母はダイニングテーブルに私の朝食を置いていた。