「あのっ、伊江宗さん!」

少し離れた距離にいる彼は、私の声に視線を月から外す。


「なんだ?」

「あの……昼間、ひどいこと言ってすみませんでした」

「昼間…?ああ……あれか」

「私、イラッてきちゃって、それでつい…」

「いや、あれは儂も悪かった。すまぬな」

「いえ、こちらこそ…」

「…まあでも、儂も、儂より佐江宗の方がいいと思うがな」

「それは違います!」

自分でも驚くくらい大きな声で否定してしまって、伊江宗さんも驚いているし、私は焦ってしまって目を泳がす。


「あ、えっと……まだ、決めてないってことです。伊江宗さんか佐江宗さんか。どっちも素敵だと思うし、あの、なんていうか……だから、その、よろしくお願いしますっ!」

私は勢いよく頭を下げる。


頭を下げながら、何を言っているんだと恥ずかしくなった。

焦ってしまって何を言えばいいのか分からないまま自爆した気がする。


伊江宗さんも驚いたように、少しの間黙っていたが、


「ああ……こちらこそ」

と返してくれた。