「そうか、普通か…」
伊江宗さんはそう言って、それ以上深く聞きはしなかった。
私も暗い話をしたくないから、それからは私の生きている時代とこの時代がどれだけ違うかを長い時間説明した。
伊江宗さんは、戦が一切ない世界があることに、一番驚いていた。
「ふぁ~……」
「眠いのか?まあ、もう大分夜遅くなっているからな」
「いや、大丈夫……」
話している内に段々眠たくなってきたけど、眠れない伊江宗さんを放っておくことなんて出来なかった。
しかし、そんな私の気持ちを察してか、伊江宗さんは私から羽織を取ると、
「儂のことなど気にするな。眠たいのなら寝ろ。そんな気遣いはいらん」
と、冷たく言った。
急に寒い風が体を掠めたからか、仲良くなれた気がしていたのに冷たく言われたことにショックを受けたのか、鼻の奥がツンと痛んだ。
なんだか突き放されたのが悲しくて、私が動けずにいると、伊江宗さんははっとした顔をして、再び私に羽織を掛けた。


