思い出すだけで手が震えてくる。
ここはこんなに静かなのに、こんな穏やかな風が吹いているのに、想像が出来ないほど怖い世界だ。
「やっぱり、伊江宗さんは、戦に慣れてるんですか?」
私がそう問うと、伊江宗さんは低く強張った声で、
「慣れるわけがなかろう」
と返した。
「何度も戦を体験したが、毎回とても怖い。当たり前じゃ。死ぬのかもしれないのだからな。死ななくても、誰かを殺さなければならぬ」
「そう、ですよね……」
「皮肉だな。母上が死んで、大切な人が死ぬ悲しみを痛いほど知っているのに、誰かの大切な人を何十人も殺すのだから」
「……。」
そうしないと生きることができない。
そうしないと自分が死ぬ。
だから仕方がないことだよ、なんて言えなかった。
殺したくない人を殺す度、彼は何を思い出して何を感じるのか。
この時代の苦しさは、私には想像もつかないものなんだろう。


