どうしてか、寝れなかった。
いや、普通こんな状況で寝られるわけがないか。
いきなり過去に飛んできて、目の前で人が次々死ぬ戦を見て、私自身も殺されかけた。
その上、イケメン双子若君と結婚して子供を産めなんていう命令をされるなんて。
色々起こりすぎて、この先もどうなるか分からないのに、普通に寝るなんてできなかった。
私は佐江宗さんを起こさないように布団から出ると、月光が差す方に向かってゆっくり歩いていき、障子を開けた。
廊下に出ると、綺麗な満月が見えて、少しだけ心が軽くなった。
それと同時に、ここが現代でないことを改めて感じた。
こんな綺麗な月や星を見れるなんて、多分私の生きている所では経験できないことだから。
しばらく月を見つめた後、ふと右のほうに視線を移すと、そこには、
「あっ……」
月に照らされ、ただでさえ美しい横顔がさらに美しく輝いて見えた。
腕を組んで立つ姿は凛としているのに、ただじっと月を見つめるその瞳はどこか寂しげで。


