「そんなに身構えなくて良い。儂は、七瀬が考えているようなことをする気はない」
「は、はい……」
見抜かれていた。
恥ずかしくてもう佐江宗さんの顔が見れない。
「もちろん、七瀬が望むなら、してもよいが」
「む、無理です!」
佐江宗さんの言葉に顔を跳ね上げると、佐江宗さんは楽しそうに笑いながら「戯言ではないか」と言った。
冗談を真に受けた自分に、また私は恥ずかしくなる。
「まあ、儂もさすがに初日に妙な気は起こさん。お主を傷つけたくもないしな。安心して休みなさい」
「あ、ありがとうございます…」
優しく微笑んだ佐江宗さんに小さくお辞儀した後、私も布団に入った。
佐江宗さんはそれを見ると、少し上体をあげて、ふっとロウソクの炎を消した。
一気に暗くなった室内には、月の明るい光だけが差し込んでいた。
少し経って、隣でスースーと佐江宗さんの寝息が聞こえた頃、私はゆっくりと起き上がった。


