「お気遣い、ありがとうございます…」
「さあ、今日は疲れただろう。もう休もう」
佐江宗さんはそう言って自分の布団に入る。
私も布団を捲りながら、初夜という言葉をもやもやと頭の中で浮かべた。
一応、今日が初夜になる。
時代も時代だし、若い男女が同じ部屋で寝るってことは、そういうことになるのか?なんてことを考えてしまう。
しかも、私に子供を産ませた方が跡取りになるとか言われているなら余計に…
「七瀬、」
「は、はいっ!」
佐江宗さんの低い落ち着いた声に、変なことを考えていた私は、思わず上擦った声を出してしまった。
「ふふっ…」
そんな私に、佐江宗さんは楽しそうな笑い声をあげる。
私に背を向けて寝ているため、表情は読めないが、笑われているのは分かるので、私は布団の上で座ったまま、恥ずかしさに下を向く。
すると、佐江宗さんは寝返りを打ってこちらを向くと、右手で頭を支え持った体勢で、にこにこと微笑んだ。


