私はそこから動けなくて、ただじっとその恐ろしい光景を見つめていた。
私のいる場所がどれだけ戦をしている場所から近くて、どれだけ危険な所かなんて、その光景を眺めていたら、全く気づかなかった。
でも、私はすぐ、それに気づくことになる。
「おい、お主!どこの者だ!」
目の前で青色の旗を持った兵を刀で突き刺した後、私に気づいた男が、私に刀の先を向けながらそう言った。
「えっ…?あっ、えっと……」
危ない状況だということには気づいたけど、急に向けられた刃に、上手く口を動かせなくなる。
「さてはお主、松士(まつし)の使いだな!」
「えっ、松士…?」
「そうとなれば、敵と見た!覚悟ーっ!」
「えっ、えっ、ちょ……っ!」
男は私に向けていた刀を振りかざす。
いきなりどこか分からない場所に飛ばされて、こんなすぐ死ぬことある…!?
ここで死ぬなんて嫌だ……!
目をぎゅっと瞑って自分の不幸を恨んだ、その時だった。