私もちょっとしたことで感情的になりすぎたなと反省した。
だからといって仲直りしたいわけじゃないけれど。
「しかしな、七瀬」
「ん?」
顔を上げると、佐江宗さんは色気たっぷりに微笑みながら、私の髪を優しく撫でて、
「儂と結婚すると言ってくれたのは、嬉しかったぞ」
と言った。
「あっ…いや、それは……」
私は髪を撫でるその手を避けるように下を向いて、赤面している顔を隠した。
「まだ決めるのには早いと思うが、儂を選んでもらえるように、儂も頑張らねばな」
ふっと笑った佐江宗さんのその顔は、やっぱり綺麗で、私は、ちゃんと見ることができなかった。
その晩。
私の布団は、佐江宗さんの布団の横にぴったりと並べて置かれていて、それを見た私は硬直した。
そんな私にくすっと微笑みを零した佐江宗さんは、自分の布団を少し離して、
「初めて会った男とこんな近くで寝たくはないだろう」
と、言った。


