佐江宗さんはとても優しくて素敵だ。
そんなつもりは一切ないけど、結婚するなら断然佐江宗さんが良い。
あんな不愛想な怖い伊江宗さんが、あの時私を助けてくれたなんて信じられない。
やっぱりあれは佐江宗さんなんじゃないかな、なんて思っていると、
「なんだ、見違えたな」
「おお、伊江宗」
伊江宗さんが現れた。
伊江宗さんはさっきまで着ていた着物とは少し違うラフな着物を着て、しかも袖を捲り上げている。その右手には槍が見えた。
「ほお、戦が終わったばかりだというのに、もう稽古か」
「ああ、少し暇ができたのでな。お主…」
伊江宗さんは佐江宗さんから私に目をやり、私の全身をじーっと見つめた。
そして、
「…馬子にも衣裳だな」
と言った。
「…はっ?」
「おい、伊江宗。そんな言い方は…」
「本当のことだろう」
いたって冷静な顔でそう言い放った伊江宗さんを見つめながらパチパチと瞬きをする。


