「ええっと…こちらの紅色がお似合いかと思います」
「じゃあこれにしようかな。着方が分からないので、着せてもらえますか?」
「はい、もちろん」
会話の主導権を私にすればいい。
私はその後も、お勧めの団子屋さんを聞いたりして、なんとか話が結婚のことや私のことに移らないようにした。
そうして、十分ほど経ち、着付けをしてもらった私は、自分の姿を姿見で確認する。
「わっ…素敵……自分じゃないみたい」
「はい、とてもお似合いでございますよ」
「お綺麗です」
袖を振りながら自分の着物姿を見ると、意外と似合っていて、テンションが上がった。
「七瀬、着替え終わったか?」
私たちの声が聞こえていたのか、佐江宗さんがそう呼びかける。
「あっ、はい!」
私がそう返事をすると、障子が開いた。
「おお、似合っておるではないか。美しいな」
佐江宗さんはそう言って、綺麗な笑顔を見せる。


