「ほら、追いかけなきゃ。自分の気持ち伝えてきなよ」
美保は穂波のランチバッグを拾ってわたしに押しつけた。
「む、無理だよ」
だって今さらだし。
西河のことを言ったって、穂波を困らせるだけだもん。
「無理でもなんでも、言わなきゃなにも始まらないでしょ。ほーら」
ランチバッグを応受け取ったものの、鉛のように重い足はそこから動かない。
穂波に対する自分の気持ちもわからなくて、ぐちゃぐちゃだ。
「ま、今すぐじゃなくても、頭の中整理してまとまったらそれ返しに行きなよ」
「…………」
頷くことも否定することもできなくて、とりあえず教室へと戻った。
机でうなだれていると、フワッと後頭部に乗せられた手のひら。
シトラスの香りをまといながら甘く優しく触れられて、弱い部分が刺激される。
「またなんかあったの?」
「…………」
「たまちゃんって、なんかあったらそうやってよくダラッとしてるよね」
「こうやってると考えがまとまる気がして」
それに机の上ってひんやりしてて気持ちいいから。
「また西河絡み?」
「え……」
思わず勢いよく上体を起こす。