「たまに誰かのこと見てるよね」
「うん……三組の西河だよ」
「西河って、あの西河陽太?」
「中学からの友達なんだ」
「そうだったの? 知らなかった。そっかぁ、西河くんか。たしか、彼女いたよね」
「うん。相手は中学のときのわたしの親友。ふたりで手を繋ぎながら、わざわざわたしのとこまで付き合ったっていう報告をしにきたの。笑っちゃうよね……」
はぁと大きなため息を吐き出す。
「そっか。それはツラかったね。っていうか、ラブラブかよ」
「あはは、そうみたい……」
「環がかわいそう……」
今まで誰にも言ったことなかったのに、どうしてかスルッと言葉が出た。
胸が苦しくて締めつけられるけど、高瀬の前で散々泣いたせいなのか涙は浮かんでこない。
ドサッ
え……?
すぐ後ろで音がして振り返ると、そこには青い顔で固まる穂波がいた。
瞬間、心が凍る。
うそ……まさか。
「環……今の……ほんと?」
全部、聞かれてた……?



