弱ってるときにそんなことを言われたら、グッときちゃう。
案外それをわかってる高瀬は策士なのかもしれない。
「それと、権ちゃんに話しかけられても反応しなくていいよ」
「いや、それはどうなの」
ダメな気がする、人として。
「とにかくもう俺のことしか視界に入れないで」
なんだか高瀬がおかしい。色々と。このまま話し続けちゃダメなやつ。
話題変えなきゃ。
「た、高瀬は兄弟とかいるの?」
いきなりの話題変換に高瀬は目をパチクリさせた。
そして小さくフッと笑ったあと、わたしの気持ちを汲んでくれたかのように答える。
「いるよ、兄貴が」
「へぇ、うちも大学生のお兄ちゃんがいるんだ」
ひとりっ子っぽく見えたのに、お兄さんがいたなんて意外だ。
「人が作るご飯、まずいって言うの。ひどいでしょ」
「たまちゃん料理できるの?」
「まぁ、適当なものならね。うち母子家庭でお母さん仕事してるし、家事全般はお兄ちゃんと協力してるんだ」
「へえ、すごいね。今度俺にもなにか作ってよ」
「え、やだよ」
「はは、即答かよ」
髪を撫でられながら他愛もない話をしていると、なんだかうとうとしてきた。



