それから十分ぐらいで涙は落ち着いた。
「ご、ごめんっ。もう大丈夫だから」
うつむいたまま高瀬の胸を押し返す。
意外と筋肉質な高瀬の胸板に触れてドキッとした。
「ほんとに大丈夫?」
「う、うん……」
今さらだけどすごく恥ずかしい。きっと顔も真っ赤だ。
「ごめんね、高瀬……」
「謝らなくていいよ。追いつめた俺が悪いんだし」
「ううん、ちがうの。完全なわたしの八つ当たりだから……」
もう一度素直に謝る。
高瀬は返事の代わりにわたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
完全に涙が引いた頃には授業が始まっていたので、そのままサボることに。
高瀬は特になにも言うことなく、そんなわたしに付き合ってくれた。
「やっぱり俺もごめん。ただ嫌だったんだ」
「え?」
「たまちゃんには俺のことだけ見ていてほしい」
「えっと、うー……ん?」
「俺以外の男と会ったりしないで。合コン行くとか、なんなの?」
真面目な顔でそんなことを言うなんて、なにも知らない人が聞いたら、ものすごく勘違いしそう。
「そんなにあいつを忘れたいなら、俺が忘れさせてあげるから」
きっと、これは高瀬の気まぐれ。
だから、真に受けちゃいけない。
「ツラいときは俺に言ってよ」



