屋上のドアは施錠されていて、開かなかった。
壁に背を預けるようにしてズルズルとその場に崩れ落ちる。
もうほんと、最低だ。
わけのわからない八つ当たりで、高瀬に思いっきりぶちまけちゃうなんて。
じわじわ目にたまった涙が、ひと粒頬に流れた。
「はぁはぁ、たまちゃん……」
「……っ」
「ごめん、俺っ。悲しませるつもりで言ったわけじゃないんだ……っ」
なんで追いかけてくるの。
いつもヘラヘラしてるくせに、どうしてそんなに必死な顔をしてるの。
「……っ」
フワッと背中に回された腕に全身が優しく包まれた。
すっかり馴染んだシトラスの香りが、気持ちを落ち着かせようとしてくれる。
「無理して忘れようとするほど、あいつのことが好きなんだね……」
耳元に響く低い声。
高瀬の声はかすれ気味で、切羽詰まっているかのよう。
それでいて、温度のない声色だった。
「うっ……っ」
泣きたくなんてないのに、高瀬の腕に包まれていたら弱い部分がむき出しになって……。
涙を我慢できなかった。



