「げっ、リオ!」
ドアのそばで聞き耳を立てていたらしい高瀬が、わたしたちの前に姿を見せた。
腕組みしながら高圧的に権田くんを見下ろす高瀬。口元は笑ってるけど、目が全然笑っていない。
う、高瀬のくせになんとなく怖い……。
目が合うだけで背筋がピンと伸び、緊張感が漂う。
「俺もまぜてよ」
「なに言ってるんだよ、リオ。お前は合コンなんかこなくても、寄ってくる女子がいっぱいいるだろ。彼女がほしいっていう俺の願望を叶えさせてくれ!」
「権ちゃんのくせに彼女とか生意気なんだよ。そんなくだらない願望にたまちゃんを巻き込むな」
「く、くだらないとはなんだよ〜! モテるヤツには、俺の気持ちなんてわかんねーよ! 上条さん、リオのことは気にせずよろしく!」
パッと言いきって、権田くんは逃げるように教室に入ってしまった。
ひしひしと感じる威圧的な視線。
高瀬はなぜか、わたしの手をつかんだ。
ふんわりかすめるシトラスの香りに、頭が正常に働かなくなる。



