放課後、誰もいない教室に残って日誌を書いていると、バタバタと大きな足音がして、そのあとガラガラとドアが開いた。

「はぁはぁ、遅くなってごめん」

走って乱れた茶色のふわふわの髪をかき上げながら、高瀬が近づいてきて目の前の椅子に座る。

「日誌手伝う?」

「大丈夫だよ、他は高瀬がほとんどしてくれたんだし、これくらいはわたしがしなきゃ」

そう言いながら手を動かしてあともう少し。

せっせと書いていると、思いっきり視線を感じて上目遣いで高瀬を見た。

「な、なに?」

「必死に書いてるなと思って」

手元を覗き込むように見られて、緊張感が増してくる。

「そ、そんなに見ないでもらえる?」

イケメンオーラがすごすぎて、まったく集中できないんだけど。

「なにしてても見たくなるんだよね」

「へっ……?」

「つい目で追っちゃうの」

目で追っちゃう……?

それって、わたしのこと?

伸びてきた指先が今日はおろし髪スタイルのわたしの髪を下からすくい上げる。

夕日に照らされた高瀬の顔が、なんだかいつもより大人っぽく見えた。

「な、なに?」

髪の毛に神経なんて通っていないのに、ちりちりと熱いような気がする。