「はい」

──ピトッ

机に頬杖をついていると、振り返った高瀬が満面の笑みを向けてわたしの頬になにかを当ててきた。

「つめたっ」

「あげる」

「え? あ、いちごみるくだ!」

かわいいいちごのイラストが描かれたピンクのパッケージ。

それは校内の自販機で売られている紙パックのもの。

「たまちゃんよくそれ買ってるよね?」

「よく知ってるね」

「廊下の窓から自販機丸見えだからね。よく見かけんの」

とは言っても、わたしが買うのは週に一回あるかないかくらいなのに。

「いいの? 高瀬が飲みたくて買ったんでしょ?」

「小銭が余ったから買っただけだよ。だから、もらってくれるとありがたい」

「ありがとう」

「ん」

わたしに気を遣わせないためか、ほんとにそうなのかはわからないけど、くれるというから素直に好意に甘えた。

ストローを刺して吸い込めば、口の中いっぱいにいちごの甘さが広がる。

「それ飲んで元気出してね」

「え……?」

驚いて高瀬を見れば、クラスメイトに呼ばれてもうすでに立ち上がっていた。

あの高瀬が心配してくれた……?

しかも、落ち込んでることに気づかれてるし……。

わたしが西河を好きだって知ってて、気遣ってくれたの?

意外な一面にちょっと拍子抜けしてしまった。