サッと手を振り払って、人ひとり分の距離を空ける。
危険だから離れなきゃ。
次になにかされそうになったら、思いっきりカバンを振り回しちゃうんだから。
「まだ怒ってる? キスのこと」
「どうしたの、急に……」
「まだ許したわけじゃないって言われたのが気になって……」
高瀬でもそういうこと気にするんだ?
「ほんとに反省してます」
「……っ」
なによ〜……!
いっつもからかってくる高瀬が素直だと調子が狂うじゃん。
「ほんとにごめん」
「……いいよ、もう」
「ほんと……? もう怒ってない?」
「うん」
「よかった」
しばらく無言のまま歩いていたら、前方から自転車が走ってきた。
狭いのに歩道の上を通っていて大迷惑。
すれ違うときに避けようとして、高瀬の方によろめいた。
「きゃあ」
「っと、大丈夫?」
腰のあたりに腕が回されて、わたしの体をしっかり支えてくれる。
「つーか、なに今のチャリ。歩道走るなよな」



