「環?」

なにか言わなきゃ変に思われる。

『おめでとう』って、『よかったね』って。

友達なら一番に喜んであげなきゃいけないのに……。

頭と胸がいっぱいで、ズキズキ痛くて。

傷ついてるのを隠すのに必死。

「ど、どっちから告白したの?」

「えー、恥ずかしいな」

「いいじゃん、教えてよ〜……!」

笑いたくもないのに、無理やり口角を持ち上げる。

「俺からだよ。中学のときから、穂波に片想いしてたんだ」

ドッカーンと、さっきよりもすごい衝撃。

「も、もう、陽太(ようた)ってば!」

照れくさそうにはにかむ西河の横で、穂波が恥ずかしそうにうつむいた。

「いいだろ、本当のことなんだから。穂波も中学のときから俺のことが好きだったって言ってくれたじゃん」

ズキッ。

「そうだけどさ、照れるよ」

もうこれ以上聞きたくない。

無理やり持ち上げた口角が震えている。

なんで……?

どうして穂波なの?

中学のときから好きだったって……。

なにそれ。そんなの知らない。

無意識に拳を握っていた。

「環の仕事の邪魔しちゃ悪いからもう行くね。またゆっくり話そう」

しっかりと手を繋いだまま、ふたりはわたしの前から去って行く。

ねぇ、西河……。

わたしもだよ。

わたしも中学のときから西河のことが──。


「好き、だったんだけどなぁ……」