「結構涼しいね。気持ちいー」
パッとわたしの手を離した高瀬が、空を仰ぐように両腕を伸ばす。
「…………」
一方わたしは屋上のフェンスのそばまで歩いて、三角座りでしゃがみ込んだ。
そして膝の間に顔をうずめる。
なんでこんなことするの?
関わりたくないのに……。
とはいえ、助けられたのも事実だからなにも言えない。
わたし、まだ怒ってるんだから。
高瀬には伝わっていなさそうだし、いちいち言ったりしないけど。
っていうか、ダメージ受けすぎ……。
普段はもう少しキリッとしてるのに。こんなに弱くないんだよ。
それなのに、昨日から弱ってる。情けないな、わたし。
「誰もいないしさ、思いっきり泣いていいよ」
「な、泣かないよ」
反射的に顔を上げる。
いつの間にか涙は引っ込んでいた。
「そう? まぁ、たまちゃんがいいなら、それでいいけどさ。お腹空いたからパン食べていい?」
「どうぞご自由に」
掴みどころがなくて、なにを考えてるのかまったくわからない。
どうしてわたしなんて助けたの。
放っておいてくれてよかったのに。
それよりしばらくしたら食堂に行かなきゃ。
美保が待ってるかもしれない。
高瀬といるのもなんとなく危険な気がするし、さっさと立ち去ろう。



