「あ、上条」
無意識に前からきた人を避けようとすると、突然名前を呼ばれた。
顔を上げるとその人とバッチリ目が合って、思いっきり頬が引きつる。
同時に胸に甘い痛みが走った。
「今から昼飯?」
「あ、うん……」
うまく目を合わせられない。
会いたいと思ってもなかなか会えないのに、どうして今日に限って会っちゃうかな。
まだうまく笑える自信がない……。
「なんか元気ないな。大丈夫か?」
とっさに目をそらしてうつむくと、優しい声が降ってきた。
視線を下げた先には西河の手があって、その手が穂波に触れたのかと思うと、どうにもならないほど胸が苦しくなった。
どんなふうに穂波に触れるんだろう。
西河はきっと優しいよね。
こんなわたしにも優しいほどだもん。穂波には、もっと……。



