「ねぇ聞いた? 西河くんと穂波の話」
名前を聞くだけで、失恋の傷がジクジク疼き始める。
「聞いた聞いた! 付き合ってるんだよね?」
「すっごいショックだったんですけど〜!」
「どうにかなれるって思ってたわけじゃないけど、憧れではあったよね。西河くんなら、大事にしてくれそうだし」
そうだね、優しさが顔ににじみ出てるような人だもん。
「うんうん、理想〜! 穂波が羨ましい」
前を歩く女子たちが繰り広げる会話をボーッと聞いていた。
お似合い、だよね。
うん、わかってる。
だけどまだ受け入れられない。
考えないようにしてたのに、思い出しちゃうなんて。
「はぁ……」
昨日からずっとため息ばっかり。
しばらく浮上できそうにないな、これは。
穂波の顔も今は見たくない。



